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2023.01.05

清水塾vol.10 NSAID服用後の貧血

86才女性。右肩痛があり、鎮痛薬のトアラセット配合錠2錠分2、セレコキシブ錠1錠分1、頓用でジクロフェナクナトリウム坐薬25mg、佐薬として胃粘膜保護薬レバミピド錠100mg 2錠分2が近医から処方されていた。

 

 

当院で人工関節置換術をすることになった。入院前の血算では赤血球407/μL、ヘモグロビン13.2g/dL, ヘマトクリット39.2%だったが、手術前の検査で、赤血球311/μL、ヘモグロビン9.8g/dL, ヘマトクリット30.1%だったために紹介された。

 

 

 

 

 

この際何を考えるべきでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この症例では、鎮痛薬としてNSAIDの一種であるトアラセット配合錠、セレコキシブ錠、ジクロフェナクナトリウム坐薬の3種類が処方されていて、それによる消化性潰瘍からの消化管出血が原因と考えられました。実際、この患者の入院後の検査では、便は黒色で、潜血反応が陽性であることが判明しています。

 

 

NSAIDを服用すると、プロスタグランジン合成阻害作用により消化性潰瘍が有意に増えることが知られています。その発生率はNSAIDの種類により差があり、COX-2 選択的阻害薬(セレコキシブ)だと消化性潰瘍の既往歴のない患者では潰瘍予防薬を併用する必要はありません。しかし、一般のNASIDでは胃十二指腸潰瘍や潰瘍出血の既往歴がある患者では PPI による潰瘍発生予防治療を行うことが必要です。消化性潰瘍が発生する危険因子としては、消化性潰瘍の既往歴の他に、本例のような高用量や座薬を含む他のNSAIDとの併用、抗凝固薬・抗血小板薬や糖質ステロイド,ビスホスホネートの併用,高齢などがあります。

 

 

具体的には、65歳以下の若年者で、なおかつ消化性潰瘍の既往がない患者にPPIを一次予防的に処方する必要はありませんが、消化性潰瘍の既往歴がない患者でも、上記のような危険因子を有する人の場合にはNSAID誘発消化性潰瘍の発生を予防するための配慮が必要です。

 

 

佐薬として用いる胃薬についても効能効果があるものをこの際しっかり学んでください。これについては、国試形式の問題にしましたので、別記の問題を参照してください。

 

問題  http://www.marunouchi.or.jp/kensyui/blog/【症例q&a】-19/

 

 

 

参考文献

  1. 日本消化器病学会ガイドライン 消化性潰瘍 第5章薬物性潰瘍 
    1. BQ5-1 NSAIDs 服用者では,消化性潰瘍,上部消化管出血のリスクは高まるか?
    2. BQ5-7 NSAIDs 潰瘍のリスク因子は何か?
    3. BQ5-8 NSAIDs の種類により潰瘍(出血)発生率に差があるか?
    4. BQ5-10 NSAIDs の経口投与と坐薬で潰瘍(出血)発生率に差があるか?

BQ5-11 NSAIDs の単剤投与と多剤投与で潰瘍(出血)発生率に差があるか?