2022.10.12
Doctor Diary
ある日、MRIの読影をしていた時です。
突然、Dr Callがかかりました。
「ドクターの皆さんはX階のY号室に至急お集まりください。」
走りました。
病室にはすでに5名くらいのドクターやナースがいました。
麻酔科Dr. Aが、「硫酸アトロピンを1A打って。」とか、テキパキと指示を出していました。
聞くと、病室で何らかの処置中に、突然心停止が起こったとのことでした。
患者に近づきました。皮膚は冷汗で冷たくなっていましたが、足背動脈は触知可能でした。
「ああ、もう大丈夫なのね。」と思いながらも、つい、いつもの習性で、自然とベッドの横に出ていました。Dr. Aは早くも帰って行きました。
足元に来た救急科のDr. Bが代わって指示を出し始めました。
「血ガスを取って。」
すぐに、近くの看護師さんたちが、鼠径部を出して、穿刺の用意をしてくれました。
ちょうど患者の右側には研修医のC君がいました。
C君は早速、鼠径動脈を探し始めました。
しかし、念入りに調べていて、なかなか採血シリンジを持とうとしません。
血圧が低めだからかと思いました。
それで、反対側から右側が判らないなら、左側ならここにあるよと、助け舟を出したりしていました。
さらに、しばらく待ちましたが、C君は一向に採血シリンジを持とうとしません。
とうとう看護師らが、しびれを切らして、私に目配せをして、ドンと腕を突ついて、
「先生、やって。」
シリンジをトンと渡されてしまいました。
え、まさか、俺がやるのか。
予想外でした。
見渡せば、20人くらいの看護師や医師が応援に来ていました。
知らないうちに絶対に失敗できない状況に追い込まれていました。
こっちは患者の左側だぞ。針差しにくい。いやだな。
でも、穿刺して、失敗する前から言い訳するわけには行きません。
覚悟を決めて、祈るような気持ちで採血しました。
私もとんだ災難でしたが、考えてみれば、これは研修医にとっても大変だと思いました。
危険な手技を、大勢の病院職員の前で、初めてやれと言われも、それはとまどうのは当然です。
これを立派にこなすのは大変ですよね。
しかし、研修医は、こういう時は、するしかないのです。
清水の舞台からえいやと飛び降りてください。
そうでないと、指導医も困るのです。
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