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当院の外科について

大山繁和外科部長からのご挨拶

 平成29年4月に外科部長として丸の内病院に赴任いたしました。これまで国立がんセンター・がん研究所有明病院に20年あまり在籍し、がん治療、特に胃癌治療に携わってきました。金沢医療センターに移動後は、一般外科や大腸がん、肝胆膵の診療も行ってきました。丸の内病院は、中信地区の整形外科、母子医療の中心的な医療を担ってきていますが、外科はやや弱い存在でした。今後は、一般外科のみならずがん外科、化学療法、緩和治療にも力を入れていきいと存じます。また、胃癌や鼠径ヘルニアなどに対する腹腔鏡手術も新たに行ってまいります。

 がん研在籍時には、切除不能とされた患者さんも多く手がけてきました。手術ができないと言われた方、胃全摘と言われた方など多くの患者さんのセカンドオピンニオンを歓迎します。いままでのつながりから、治療困難例や乳がんの方など、がん研有明病院への紹介も可能です。ご遠慮なく受診してください。

主な対象疾患

消化器外科:胃癌、胃粘膜下腫瘍, 小腸腫瘍、大腸癌、直腸癌、急性腹症(腸閉塞、急性虫垂炎) など
肝胆膵外科:胆石症など 膵癌、大腸癌肝転移など
一般外科:鼠径ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど
肛門外科:痔核、直腸脱など

診療の内容

胃癌

治療は、最新の胃癌治療ガイドラインに従って行います。病状や治療法を理解していただくため、外来に患者さん用の「胃癌治療ガイドライン一般用」を準備しています。また、安心して治療を受けていただくため治療経過の概要であるクリニカルパスを説明、配布し、治療について十分に理解、納得していただきます。パスには、早期の社会復帰のためのがんリハビリテーションERAS(早期回復プログラム)パスを導入しています。もともと糖尿病や心疾患、肺疾患のある方は、それぞれ専門の糖尿内科、循環器内科、呼吸器内科に受診していただき、全身の病気を評価してから手術に臨んでいただきます。
外科治療で心がけているのは、根治性と安全性ですが、更には術後後遺症の少ない手術になるよう心がけています。 早期胃癌は、低侵襲である腹腔鏡手術(図1)を基本に、術後ダンピング症候群や胃切除後胆石症などの術後の後遺症を減らすため、消化管に分布する自律神経の温存手術を行っています。

  • 図1. 腹腔鏡(補助)下胃切除術

  • 図2.幽門保存胃切除術

図3.観音開き法

また、幽門保存胃切除術(図2.がん研有明病院ホームページより転載(一部改変))を積極的に行っています。できるだけ胃の全摘を避け、噴門から2cm離れていれば亜全摘と呼ばれる胃を残す手術を、食道胃接合部癌に対しては噴門機能温存を目的に観音開き法(図3.上川康明ほか 手術52:1477-1483, 1998より引用)を用いた噴門側胃切除術を行っています。観音開き法は、これまでのさまざまな噴門側胃切除後の再建法の中でもっとも術後QOLの良い再建法と言えます。しかし、吻合が煩雑で難しく広くは行われていません。早期癌の方は、術後10日前後で退院を予定しています。
  進行胃癌では、根治性を重視し適切なリンパ節郭清を伴う手術を行っています。 リンパ節転移が高度な患者さんでは、術前化学療法を行い治療成績の向上に努めています。経口摂取が不十分な方、術後補助化学療法を受けられる方、胃全摘となる方では、NST(栄養管理)チームと協力して入院治療を行います。進行癌の方の退院は術後14日から21日を目処にしています。 胃癌を担当する大山は、がんセンター、がん研有明病院などで、これまで2,000例を超える手術経験があります。治療成績も、全国集計より非常に高い成績を上げてきています。(表1・表2)安心して受診してください。

表1.大山医師 胃癌 治療成績 (自験 約2000例 根治切除 5年生存率)


病理stage IA IB II IIIA IIIB IV
大山 95.2 % 95.2 % 80.8 % 69.3 % 52.3 % 23.7 %
全国集計 91.9 % 85.1 % 73.1 % 51.0 % 33.4 % 15.8 %

表2.大山医師と全国集計平均 5年生存率の比較(全国集計出典:2001年胃がん学会全国集計)


胃粘膜下腫瘍

胃粘膜下腫瘍は、胃壁の筋層から発生する腫瘍です。カハール細胞という運動機能に関与する細胞が由来とされています。顕微鏡の免疫染色でC-kit陽性となるのが特徴で、消化管間葉腫瘍GISTと呼ばれます。腫瘍の悪性度は、腫瘍の大きさと細胞分裂能で規定されます。一般的に2cm以上のものは手術適応とされています。5cm以上になると転移の可能性が出てきます。したがって、2cm-5cmのあいだに治療を受けることが大切です。手術は、5cm以下のものは腹腔鏡手術が可能です。最近では、消化器内科医と共同で行う腹腔鏡・内視鏡合同手術LECSが行われています。当院でも、この治療を行っており、胃の切除範囲が小さくなるよう、術後愁訴が出ないよう心がけています。

大腸癌

大腸癌治療ガイドラインに従って治療を行っています。ほとんどの手術を腹腔鏡で行っています。大腸癌の腹腔鏡手術では、お臍と左右2箇所ずつ計5箇所の傷で手術がおこなわれ、お臍のところで吻合が行われます。可能なかぎり肛門機能を温存する術式を採用しています。StageIIIの方には再発予防のための術後補助療法が必要となります。大腸癌の化学療法は毎年新しい分子標的治療薬が開発されるなど、進歩が著しく選択枝も増えています。ガイドラインの選択枝の中から患者さんと相談し、ライフスタイルに合った化学療法を行っていきます。

胆石症

胆石症は良性疾患ですが、無症状胆石症でも定期的(最低1回/年)な超音波検査は受けていた方がよいです。胆管に結石がある場合は治療(内視鏡的乳頭切開砕石術)の対象になります。胆石症で腹痛、発熱、黄疸や褐色尿に気付いた時は受診してください。  胆嚢ポリープの大多数は5mm以下のコレステロールポリープですが、10mm以上では癌との鑑別が必要になり、手術適応とされています。腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われます。術後3-5日の入院で済みます。胆道には様々な破格があり、術前の精密検査MRI検査(MRCP)や内視鏡検査(ERCP)が必要です。膵胆道合流異常症は、がんのリスクの高い疾患です。予防的手術が勧められています。

鼠径ヘルニア

いわゆる脱腸です。外腸骨動脈から腹壁に上行する下腹壁動脈を指標にその外側の外鼠径ヘルニアと内側の内鼠径ヘルニアに分類されます。従来は、鼠径部を5cm前後切開する前方アプローチと呼ばれる手術を行っていましたが、腹腔鏡手術TAPPを導入しました。

図4.腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術

腹腔鏡手術ではヘルニアになりやすい外腸骨動脈内側(大腿ヘルニア)の観察・治療もできます。ヘルニアの部分および左右の腹膜を切開し、メッシュを当て腹膜を閉じてきます(図4)。2時間前後の手術で、傷はお臍と左右5mmの小さな傷です。しばらくするとほとんどわからなくなります。全身麻酔で行いますので、当日入院なら2-3日で退院、前日入院の場合3-4日で退院できます。

実際の右鼠径ヘルニア患者さんの写真をお見せします。お臍からカメラを入れると図5のように見えます。真ん中のくぼみがヘルニア囊です。腹膜を切開し、血管や精管などを傷つけず剥離してメッシュを置き、タッカーと呼ばれる吸収性の針で固定し腹膜を吸収糸で閉じてきます(図6)。外・内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの治療ができます。

  • 図5.右外鼠径ヘルニア

  • 図6.メッシュ挿入・腹膜閉鎖

虫垂炎

虫垂炎の手術も腹腔鏡手術で行われます(図7、図8)。小さい開腹の傷から覗くよりも、腹腔内の観察が容易です。創が小さいので従来の開腹手術よりも創感染が少ないと言われています。ただし、慢性的な虫垂炎の場合は、周囲への癒着が強く剥離が難しいことがあり開腹手術へ移行することもあります。

  • 図7.急性虫垂炎

  • 図8.虫垂間膜・虫垂根部処理後

肛門疾患

痔核に対して薬物療法、痔核硬化療法(ジオン注、ALTA療法)、切除手術などを行っています。痔核硬化療法は、痔核を切らずに治す治療法です。 直腸脱は、高齢の女性に多い病気です。お元気な方には、腹腔鏡手術を行っています。心臓などの合併症が多く全身麻酔が困難な場合は、経肛門的手術を行っています。

診療実績

2016年の手術総数142件、入院総数:194名、平均在院日数:12.3日でした。また小児外科は全て日帰り手術でした。

外科手術症例数

    2012 2013 2014 2015 2016
良性 1 0 0 1 1
悪性 8 8 8 2 4
(腹腔鏡) 0 1 2 1 0
良性 10 12 13 13 10
悪性 16 21 16 12 15
(腹腔鏡) 11 15 12 7 10
肝切除術 0 0 0 0 2
胆嚢 胆嚢摘出術 16 26 22 20 10
(腹腔鏡) 14 24 19 15 7
ヘルニア (成人) 47 28 38 35 34
ope 12 21 7 8 13
ALTA 17 8 3 9 8
乳房 MMT 3 1 1 0 0
良性 10 7 4 3 3
悪性 7 9 9 10 12
体表他   2 4 6 5 4
小児外科 ヘルニア 33 27 28 25 25
停留睾丸 1 5 1 2 3
その他 2 4 0 1 0
合計   185 180 155 146 142
緊急手術   14 15 15 15 16

地域連携

外科には、地域連携がもっとも大事です。ご紹介いただいた患者様には、来院時、手術後、退院時など適時診療情報提供を行うだけでなく、積極的に「かかりつけ医」の先生に逆紹介を行っていきます。どうぞ、ご紹介ください。