研修医募集サイト

Blog

研修医募集サイトトップ > ブログ > Dr.Tのつぶやき 精神科疾患を持つ人の水中毒

2023.07.19

Dr.Tのつぶやき 精神科疾患を持つ人の水中毒

今回紹介する患者は45歳男性です。

 

初夏の暑い日の夕方、夜勤のために車で会社まで行ったのですが、そこで突然手足の痺れを感じ、体を動かすことができなくなり、救急車で病院に運ばれました。自宅の自室は西向きで、エアコンは壊れていたそうです。

 

 

 

既往歴:統合失調症で精神科から投薬治療を受けています。

来院時所見:意識は清明で、皮膚は冷汗でしっとりしていた。結膜に貧血なし。脈拍は整で、頸静脈の怒張なく、頚部リンパ節は触知せず、前脛骨部の浮腫はなし。呼吸音や心音は正常で、腹部は平坦ですが、触診すると嘔気が見られました。グル音は正常でした。

 

 

 

 

 

この状態で、皆さんは何を考えますか。そのために何を検査しますか。

 

 

 

 

 

私は過呼吸発作や脱水症を念頭に血算、化学と静脈血ガスを調べました。その結果を下に示します。

 

 

静脈血ガス結果(正常値)pH 7.519, pCO2 23.7mmHg, pO2 80.0mmHg, HCO3 19.2mmol/L, ABE -1.7mmol/L, Na+ 120mmol/L, K+ 3.1mmol/L, Ca2+ 1.12mmol/L, Anion Gap 12.8mmol/L

 

 

以上より、脱水症というよりは、むしろ低ナトリウム血症が問題で、その原因精査のために、血糖値、血液浸透圧、尿浸透圧、尿中Na+イオン濃度を追加して測定しました。

 

 

 

その結果:血糖値 111mg/dL, 血清浸透圧 240mOsm (275290), 尿中浸透圧 61mOsm (501300), 尿比重1.005 (1.0061.030) 随時尿中Na+ 20mEq/Lでした。

 

 

 

 

以上より、水の多飲による低ナトリウム血症と診断しました。

 

 

 

 

さて、この人にはハロペリドール、ビペリデン、メイラックス、アルプラゾラム、トリアゾラムなどの向精神薬が処方されていました。ハリソン内科学によると、精神疾患を持つ人の処方薬には、しばしば抗コリン作用があり、口渇の副作用があることから、低ナトリウム血症が発生し易いことがしっかり書いてあります。

 

 

 

ハリソンによると、通常の腎臓が持つ最大排泄能力は12L/日です。これだと水中毒を起こすには12L 以上の水を飲む必要がありますが、タンパク質や電解質をあまり摂取しない人の場合は、5L以上の水分摂取でも、この例のように低ナトリウム血症になることがあるようです。

 

 

 

頭の片隅に入れておいてください。